街を離れる前に お別れをしに 川辺を歩く
水の流れは いつもより速い 水嵩は 落ち着いている
台風の後 流れてきた 流木が
集められていた
思い出に
ところどころ 木の皮が残った 流木を
持ち帰る
日も暮れて 暗闇の中に 姿を消そうとする
川沿いで
誰かが 思いついたのだろう
丸太を 交互に 積み重ねて
テントを張るように 木々を組み立てて
流木で ピラミッドを 作っていた
夕闇の中で シルエットとなって
形だけしか 見えない
ひっそりと 佇む姿は
まるで モニュメントのように
シュールだった
帰り道
ふと 上を見上げると
道路標識の その上に
「4m」 と記された サインがあって
こんな所に なぜ 高さが必要なのかと 思ったけれど
ここは 昔 洪水があった場所で
古くから住む人たちには その記憶が残っていて
9月の台風で 川の水位が上がったときは
氾濫する 川の流れを
いつまでも じっと見つめる
老人たちの 姿があった
ここまで 水が来るかもしれない
もしかしたら 流木のピラミッドは
墓標なのかもしれない
日が暮れる 時間が 早くなって
夕闇が 街を覆い始めた頃
川辺のピラミッドは ただ 黒い影となって
夜の闇に佇む 墓標のようで
帰りしなに 街の高さの 標識を見た記憶は
今となっては どこかを 漂ったようで
この世のものとは 思えない
引越しのために ダンボールを貰えないかと
近所の地主がやっている コンビニに 尋ねると
全部畳んでしまっているからと
わかりきったことを言って
さも迷惑そうに
応対するので
随分 申し訳ない気持ちにさせられた
土地で 財を築いた 血筋たち
人の様子をみれば その土地の気が分かる
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