2011年11月18日金曜日

さよならを言いに

街を離れる前に  お別れをしに  川辺を歩く


水の流れは  いつもより速い  水嵩は  落ち着いている


台風の後  流れてきた  流木が


集められていた


思い出に


ところどころ  木の皮が残った  流木を


持ち帰る


日も暮れて  暗闇の中に  姿を消そうとする


川沿いで


誰かが  思いついたのだろう


丸太を  交互に  積み重ねて


テントを張るように  木々を組み立てて


流木で  ピラミッドを  作っていた


夕闇の中で  シルエットとなって 


形だけしか  見えない


ひっそりと  佇む姿は


まるで  モニュメントのように


シュールだった



帰り道


ふと  上を見上げると


道路標識の  その上に


「4m」  と記された  サインがあって


こんな所に  なぜ  高さが必要なのかと  思ったけれど


ここは  昔  洪水があった場所で


古くから住む人たちには   その記憶が残っていて


9月の台風で  川の水位が上がったときは


氾濫する  川の流れを


いつまでも   じっと見つめる  


老人たちの  姿があった



ここまで  水が来るかもしれない


もしかしたら  流木のピラミッドは


墓標なのかもしれない



日が暮れる  時間が  早くなって


夕闇が  街を覆い始めた頃


川辺のピラミッドは  ただ  黒い影となって  


夜の闇に佇む  墓標のようで


帰りしなに  街の高さの  標識を見た記憶は


今となっては  どこかを  漂ったようで


この世のものとは  思えない



引越しのために  ダンボールを貰えないかと


近所の地主がやっている  コンビニに  尋ねると


全部畳んでしまっているからと


わかりきったことを言って


さも迷惑そうに


応対するので


随分  申し訳ない気持ちにさせられた



土地で  財を築いた  血筋たち


人の様子をみれば  その土地の気が分かる  



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