2014年1月30日木曜日

森には秘密が眠っている 4

眠れる森 最終章



クリスマスイブの出来事
偶然が起こす惨事は
マリアやキリストの歴史と無縁ではなくて

キリスト教の根幹にある罪の意識―-「悔い改めよ」
原罪はキリスト自身にもあるはずで
この作品に隠されているキリストの母殺しが
暗にキリストの原罪を示しているようにみえる

母殺しが意味するものは
母性崇拝を元にした原始宗教を
一神教のキリスト教が制圧したことで

ドラマでは輝一郎も美奈子も子供時代に
性的虐待を受けた可能性があって
子供たちが親から受けた心の傷が
登場人物たちの間接的な動機になっていて
まるで二人の秘められた憎悪が呼応したかのように
イブの日に殺人事件が起きる


輝一郎は母の故郷の大学を選び
美奈子の姉は輝一郎の母に似ていたという設定があって
輝一郎は母を追い求め結果的に母殺しを繰り返したことになる


輝一郎が横恋慕している姉とのシーンは一度もなく
美奈子との回想シーンばかり何度も出てくるのは
実は美奈子が輝一郎を動かした
そんな可能性を示唆しているような


輝一郎と美奈子の心は輝一郎が事件を起こしたり
再会を画策する前から
実は無意識に繋がっていて
ドラマを観ていても親の影に強く支配されている
子供同士の宿命が見えて
一応美奈子とキムタクのロマンスの体を取っていたけど
私は美奈子はキムタクよりも輝一郎との方が
深い繋がりがあるようにみえた

二人とも似てるんですよね
だから自分から家族を奪い自分を騙した男を最後
見殺しにはできなかったのかなぁと


過去を完全に想いだしたときに
手に持っている乾杯のグラスを割ってしまって
美奈子の白い手袋に赤い血が染みていくシーンが
気になったのですが

このシーンはどうやら15年前の殺害の時の
輝一郎の血まみれの黒い手袋と対比しているようで

刺された輝一郎の白い手袋も真っ赤に染まっているんだけど
美奈子の白い手袋も自分の血で染まっているのは
この事件の二人の関係を示しているようで

過去を完全に想いだしたとき
森が眠りから覚めたとき
美奈子の手が赤く染まっていくのは
自分の掌をみて叫び声を上げたのは
15年前の凄惨な事件現場を想いだしただけでなく
その時その手に血の付いた包丁を握っていたからで

記憶を完全に想い出して森の封印が解かれたとき
美奈子の掌に血が浮かび
輝一郎が腹を刺され血まみれになるのは

まるで封印が解かれ蘇った怨念の復讐のようで

15年後の報復によって流された加害者の血
そんな暗喩があるような気がしました


そもそも輝一郎が現場から立ち去るとき
美奈子に血糊をつけて包丁を持たせたのも
彼女を殺さなかったのも

 お前がやったんだ 

と言ってるようなもので
包丁を持って立ち尽くす記憶が鏡の中なのは
鏡の中では笑っていたのは
想念の世界では彼女が実行者だったから


単にトリックのためだけじゃなくて
二人は共犯だった
想念の世界と現実の世界での
だって美奈子に家族を殺す力などなかったから




まあ脚本家がいろいろと深い想いを込めて書いた作品だろうに
推理やトリックばかりに関心が向けられて
それだけで作品を判断されたら
たしかに絶望的な気持ちになりますよね・・・
それもまあトリックや構成が視聴者を夢中にさせるほど
素晴らしかったせいなんですけど



最後国府に刺され精神を病んだ輝一郎は
精神病院に収容され
幻の中の母親の言葉

生きて 生きて 生き続ける


をずっと吐き続けているのですが

まるでこれがこのときの野沢氏の決意のようにも聞こえるし
キリストがマリアの意志によって
狂った世界でずっと生き続けるよう
定められているかのようにも見える




ちなみに美奈子と輝一郎の大人になってからの出会いは
コンサート会場の異臭騒動で
その後遺症の治療のために訪れた病院で再会するんだけど

このシーンの場所はコンサート会場だけど
倒れ込む人々の様子は
地下鉄サリン事件そのもので

サリン事件がこの時代を象徴する血筋の付け替え事件で
たくさんの人の運命が入れ替わったのを
暗示しているような気がする



一家が亡くなって実娘が治療に来たとき
自分の娘なんだから自分の元でキムタクと一緒に育てていれば
15年後に不幸が積み重なることはなかったんじゃないかなと想う
迎えに行こうとしてたくらいなのにさ

最初に精神科医が托卵しなければ悲劇の種は生れなかったわけで
しかも記憶を封印するという次の悲劇の仕込みまでしておきながら
手元に置くこともせず実娘を簡単に手放してしまうなんて
よーーーく見ると悲劇の種をばら撒いて
最後に刈り取っているのがわかる

しかも美奈子の記憶を封印することで
真犯人の目撃証言も封印してしまった
犯人のために動いているようなもん
このドラマで起こるすべての悲劇の始まりに
まるでオーケストラの指揮をするかのごとく
この精神科医が関わってんのよね





眠れる森の美女が主人公なのに
目が覚めた時王子はいないっていう


これはキムタクが最後死にたいっていう要望を出したせいで
それによってエンディングはとても印象に残る
素晴らしい作品になったのですが
よく考えるとおかしな話になっちゃったんですよね


よく考えると変な話っていうのは橋爪功の感想らしく
多分脚本家は普通にキムタク王子とのハッピーエンドの
つもりだったと想うんですが
(そうじゃないと「眠れる森の美女」が伏線にならない)
キムタクは『華麗なる一族』とか『若者のすべて』とか
死にオチが大好きな人で
主役じゃないなら死にたいっていう人
(華麗なる~は主役なのに原作で死んでるからっていう)

蠍座の彼は死と再生の星の下に生まれてるから仕方ないんですが
ナルちゃんもいい加減に・・・

ただでさえ他も大量に死んでるのに王子様まで死なれたら
わけわかんないのに

まあともあれ最後美しい終わり方で
だからこそ記憶に残る不朽の名作に昇華された
神官とマリアの下にたくさんの死が生まれた
そんな伝説的な物語でした







音楽も演出も素晴らしい。まるで映画のよう



福島の舞台が御倉市
群馬が中の森

倉とか森(の中)とか
集合無意識や潜在意識を表す地名が付けられてる




フジテレビ系ドラマオリジナル・サウンドトラック「眠れる森」フジテレビ系ドラマオリジナル・サウンドトラック「眠れる森」
(1998/11/18)
TVサントラ





0 コメント:

コメントを投稿